耐摩耗ソリューション
重工業プラント設備の耐摩耗ソリューション
製鉄所をはじめとする重工業プラントの設備部品は、日々、摩耗・衝撃・高温・腐食にさらされています。摩耗形態と使用条件に合わせた硬化肉盛溶接、耐摩耗肉盛鋼板、ロールの肉盛再生などの対策で、部品寿命の延長と計画外停止の削減を支援します。
摩耗のメカニズム
摩耗形態に合った対策選びが、寿命延長の第一歩です
設備部品の摩耗は、多くの場合、複数の要因が重なって進行します。部品ごとに支配的な摩耗形態を見極め、それに適した肉盛合金・材料を選定します。
アブレシブ摩耗
鉱石、焼結鉱、コークス、スラグなどの硬い粒子が表面を削り取る摩耗。シュート、ホッパー、ライナーで多く見られます。
衝撃
大きな塊の落下や打撃による変形・欠け・割れ。破砕機、グリズリーバー、スクラップ用グラブで問題になります。
金属間摩耗・転がり疲労
ロールやガイドなど金属同士の接触・すべりによる摩耗、かじり、表面のはく離(スポーリング)。
エロージョン
微粒子を含む高速の気流・流体による侵食。ファン羽根、ダクト、配管エルボなどで発生します。
高温・熱疲労
加熱と冷却の繰り返しによる熱き裂(ヒートチェック)や高温酸化。連鋳ロールや排ガスフードなどで発生します。
腐食
冷却水、スケール、溶融亜鉛などによる腐食・侵食。摩耗と重なると損耗が加速します。
主なソリューション
部品と使用条件に合わせた4つの対策
摩耗状況・材質・使用温度を確認したうえで、新しい耐摩耗部品の製作から摩耗部品の再生まで、最適な工法と材料をご提案します。
硬化肉盛溶接(ハードフェーシング)
摩耗した部品を肉盛溶接で元の形状に復元し、表面を耐摩耗合金で保護します。新品部品への予防的な肉盛にも適用できます。摩耗形態に応じて、クロム炭化物系・複合炭化物系・マルテンサイト系・ステンレス系などの肉盛合金を選定します。
- 破砕機のロータ・歯
- グリズリーバー
- スクラップ用グラブ
- スクリューフライト
- ファン羽根
- 配管・エルボ内面
- ダミーバーヘッド
耐摩耗肉盛鋼板(複合鋼板)
軟鋼またはステンレス鋼の母材に、耐摩耗合金を溶接で肉盛した複合鋼板です。平板のほか、切断・曲げ加工品や、ライナー・シュートなどの製作品として、図面または現物に合わせてご提供します。
- ライナー
- シュート・ホッパー
- フィードボックス
- トランジション(移行部)
- スクリーンパネル
- フィード管・吸引管
ロールの肉盛再生(クラッディング)
連続鋳造ロールや圧延ロールを、使用位置に適した肉盛材で再生します。入熱と希釈を管理して肉盛した後、機械加工と検査で元の寸法・プロファイル・表面状態に戻します。胴部・軸部が補修可能な範囲であれば、新品購入より短納期かつ経済的になるのが一般的です。
- フットロール
- セグメントロール
- 矯正・引抜ロール
- ワークロール
- 孔型ロール
- ピンチロール・コイラーロール
高温・腐食環境向けの被覆・再生
熱疲労や高温酸化、溶融金属による侵食を受ける部品には、溶射被覆や耐食合金のクラッディングを適用します。二次冷却ノズルは、洗浄・噴霧パターン検査・耐摩耗コーティングにより再生できます。
- 転炉排ガスフード(水冷管)
- 溶融亜鉛めっきポット
- 二次冷却スプレーノズル
適用箇所
製鉄所の工程別 主な適用例
原料の受け入れから圧延・表面処理まで、摩耗の激しい部位に対策をご提案します。
01原料・事前処理
- スクラップ用グラブ
- 破砕機(クラッシャー)
- コークス炉まわりの部品
- 焼結鉱クラッシャー
- グリズリーバー
02製銑・製鋼
- 高炉 炉頂装入シュート
- 分配シュート
- ベル・ベルシート
- ホッパーシート
- 転炉排ガスフード(水冷管)
03連続鋳造
- 二次冷却スプレーノズル
- フットロール
- セグメントロール
- 曲げ部・矯正・引抜ロール
- ダミーバーヘッド
04圧延・仕上げ・めっき
- ワークロール
- バックアップロール
- 孔型ロール(条鋼・形鋼)
- ピンチロール・コイラーロール
- 溶融亜鉛めっきポット
全工程共通:搬送・集じん設備
- シュート・ホッパー
- スクリューコンベヤ
- ファン羽根・ケーシング
- ダクト
- 配管・エルボ
- スクリーン(篩)
製鉄所のほか、セメント、鉱山・砕石、発電、リサイクルなどの設備の摩耗部品についてもご相談ください。
耐摩耗肉盛鋼板
耐摩耗肉盛鋼板の構造と種類
耐摩耗肉盛鋼板は、溶接性・加工性のよい母材と、硬い炭化物を含む肉盛層を組み合わせた複合鋼板です。取付は母材側の溶接やボルトで行い、摩耗面は高硬度の肉盛層が保護します。
- 1耐摩耗肉盛層(炭化物を含む高硬度の合金)
- 2溶融境界(肉盛層と母材が溶着した境界)
- 3母材(軟鋼・ステンレス鋼など)
- 4応力解放による細かなひび割れ(品質上の問題ではありません)
- 板厚
- 母材+肉盛層の組合せで選定(例:5+3、6+6、10+10)。総厚4 mm程度の薄板から厚板まで。
- 標準サイズ
- 1,500×3,000 mm、2,000×3,000 mm など。肉盛範囲は板の外周よりやや内側になります。
- 母材
- 一般構造用鋼(S235/SS400クラス)が標準。耐摩耗鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼も選定できます。
- 供給形態
- 平板、切断品、曲げ・ロール加工品、ライナー・シュートなどの製作品(図面または現物サンプルから製作)
主なタイプと選び方
| タイプ | 特長 | 硬さ・使用温度の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| クロム炭化物系 | 高いアブレシブ摩耗と低〜中程度の衝撃に。最も汎用的なタイプ | HRC 62–64/〜300°C | ミルライナー、ダンプ荷台ライナー、ローダーバケット、粉砕機部品 |
| クロム+ニオブ炭化物系 | 靭性を高め、激しいアブレシブ摩耗に対応 | HRC 62–64/〜450°C | ドラグラインバケット、コークスハンマー、リッパー、篩、破砕設備 |
| 複合炭化物系 | 炭化物が多く、最高水準の耐摩耗性。高温でも硬さを保持 | HRC 62–64/〜700°C | 破砕・篩分け設備、高炉ホッパー・炉口部、炉まわり、高温排風機 |
| チタン炭化物+マルテンサイト系 | 激しい摩耗に加え、強い衝撃やえぐり摩耗(ガウジング)に。ひび割れが少ない | HRC 52–55/〜200°C | オーガー、スクレーパー、ミキサー、破砕機、ショベルバケット、スラリー配管 |
用途に応じたバリエーション
低摩擦・平滑面タイプ
表面が平滑でひび割れが少なく、湿った材料や付着しやすい材料の付着・閉塞を抑えます。シュート、ホッパーに。強い衝撃部向けの仕様もあります。
薄肉・軽量タイプ
総厚4〜6 mm程度。1層の肉盛で高い硬さ(HRC 64–66目安)が得られ、重量に制約のある箇所に適します。衝撃部には不向きです。
部品形状に合わせた局所補強
摩耗プロファイルに合わせて炭化物の肉盛パターンを設計する特注仕様。焼結鉱クラッシャーや破砕機のデッキなど、摩耗の激しい部位に。
※ 硬さ・使用温度は多層肉盛時の一般的な目安です。実際の値は合金、層数、母材により異なります。用途に合わせて最適な仕様をご提案します。
加工・施工のポイント
耐摩耗肉盛鋼板を長く使うために
硬い肉盛層を持つ鋼板は、一般の鋼板と同じ方法で加工すると、割れやはく離の原因になります。主なポイントは次のとおりです。
切断
- プラズマ切断が最も経済的。高い寸法精度が必要な場合はレーザーやウォータージェット
- 穴や窓など内側の形状を先に、外形を最後に切断
- ピアシングは肉盛面側から行い、切断後はバリ取りを行う
- 端材は一般の鋼材と分けて保管・リサイクル
曲げ・ロール加工
- 肉盛面を内側にし、肉盛ビードと直角方向に曲げるのが基本
- 最小曲げ半径の目安を守る。肉盛面を外側にする場合は2倍以上の半径が必要
- ロール加工では当て板を使い、ロール表面を保護
- 外面に肉盛が必要な管は、板を曲げるより所定径の管に直接肉盛する方が確実
溶接・取付
- 構造上の溶接は必ず母材側で行う
- 肉盛合金が溶接金属に混入すると脆くなり、割れの原因に。混入の恐れがある場合はステンレス系(307系など)の溶接材料を使用
- 継ぎ目やボルト頭は硬化肉盛で覆い(キャッピング)、摩耗から保護
- 固定方法:すみ肉溶接、プラグ溶接、スタッドボルト、溶接ナット、皿ボルトなど
設置方向・取扱い
- ファン羽根・ケーシングや気送管など、高速の微粒子が当たる部位では肉盛ビードを流れと直角に配置
- ビードが流れと平行だと、ビード間の谷が先に摩耗しやすい
- 吊り上げはクランプやフォークリフト等で行い、マグネットリフターは使用しない
ご相談時にお知らせいただきたい情報
摩耗部品の写真や交換周期をお知らせいただければ、摩耗形態を見極めたうえで、対策案とお見積りをご案内します。
- 01部品名と図面、または現物の写真
- 02現在の材質と交換周期(使用寿命)
- 03摩耗の状況(摩耗箇所・摩耗量・写真)
- 04接触する材料(鉱石・コークス・スクラップなど)と粒度
- 05使用温度、衝撃の有無、腐食環境
- 06必要数量とご希望納期
新規案件・調達課題について、まずはご相談ください
図面・3Dデータをお送りいただければ、日本語窓口が技術検討をご案内いたします。